新年度のはじまり

4月からの年度始まりと同じ時期に専門医の更新が数年ごとにあります。今回の更新は、皮膚科専門医と温泉療法医です。

以前は日本皮膚科学会認定皮膚科専門医でしたが、この4月からは、専門医制度の再編により日本専門医機構認定皮膚科専門医ということになりました。

連載開始

月刊キャレルがこの4月号(3月20日発売)からリニューアルされました。これから1年間、「さいじょう医師の皮膚科よもやま話」として小文を寄稿することになりました。4月号は、「アレルギーあるある」です。

メディアシップ春航祭2023

古い話で恐縮ですが、2023年4月8、9日(土日)、メディアシップ10周年記念の春航祭2023 が開催されました。春航祭イベントの中で、巻き爪・陥入爪と爪白癬について一般向けセミナーをさせていただきました。そのためかどうか、爪の問題で当院を受診される患者さんが増えています。

2023年の1年間で、巻き爪・陥入爪で来院された患者さんは164名。保険外になるワイヤ治療は、役に立ちそうな場合に、ご説明のうえご希望されたときにのみ行いますが、46名の方に行いました。

ワイヤ治療は、痛みもほとんどなく、巻き爪の矯正に有用な方法です。しかし、一度矯正に成功してもまた再発することはよくあります。「爪が巻く」のには理由や原因があるわけで、その辺の対策が必要なのは言うまでもありません。

巻き爪予防対策や軽い陥入爪の自己治療方法は、当院HPの巻き爪・陥入爪の解説をご参考になさってください。ただ、お気軽にお早めに受診していただいたほうが、その後の経過が良いようです。

爪白癬については、2023年の1年間で治療を行った方は83名(2023年以前に治療開始した方も含む)。その6割以上のひとが、抗真菌剤内服治療を行いました。

爪白癬の場合、多くの場合の治療の第一選択は抗真菌剤内服です。半年後の治癒率は80%くらいといわれています。しかし、肝機能障害があるひと、併用できない薬をすでに内服されているひと、副作用チェックの採血ができないひとなどは、抗真菌剤内服はできません。また、薬の副作用などで、せっかく始めた治療を中止しなければならないこともあります。

爪白癬を塗り薬で治すのは容易なことではありません。比較的軽い爪白癬でも、1年後の治癒率は20%程度にとどまるといわれています。

爪白癬は、治療により爪が生え変わるとともに治っていきます。したがって時間がかかります。そのためか、途中で治療を中断してしまうかたが結構多いのは残念です。

治療のモチベーションを保ってもらうためにも、治癒率を上げるためにも、当院では、爪削りを積極的に行っています。もちろん、削りすぎ切りすぎで爪が周囲の皮膚に食い込んで痛くならない範囲で。

メディアシップ春航祭 2022

もうすぐ、メディアシップができて9年、さくらひふ科がメディアシップに開業して8年になります。

4月9、10日(土日)は、メディアシップ春航祭2022 が開催されます。
酒井あかり医師が「みんな気になるシミ・イボの話」と題して講演します。
4月9日(土)14:20~14:40、新潟日報メディアシップ 1F みなと広場階段前でお待ちしています。

爪のケア

「爪のケアで冬場快適に」と題して、新潟日報おとなプラス1月5日号に大きく載った記事を覚えていらっしゃいますか?
私も取材を受け、紙面に載りました。記者さんといろいろお話する中で、正確にわかりやすく読者に伝えるためにたいへんな労力を投入されていることがわかりました。記者さんたちに敬意を表したいと思います。

最近当院の診療に加わった酒井あかり医師は、爪の診療に力を入れています。当院HPから情報発信もいたしますが、お困りの時はぜひ酒井医師のいる時間帯にお越しください。

ドボベットフォーム

乾癬の塗り薬で、新しい剤形(フォーム、泡状)のものが、6月から使えるようになりました。ひんやり冷たい感触が、夏向きです。
ボトルを振ってからシューっとスプレーすると、泡状の外用剤がでてきます。指先で伸ばすようにすると、冷たい感触が心地よく、泡がつぶれて軟膏状になっていきます。

シューっと冷たい泡がでてきます
指で伸ばすと軟膏になります

緑膿菌性毛包炎

おうち時間の楽しみとして、長湯をするひとも多いと思いますが、それが誘因となって緑膿菌性毛包炎が発症することがあるので、ご注意を!

赤い斑点がいくつもお腹や太ももあたりに突然でてきて、ビックリして受診される方がいらっしゃいます。斑点の一つ一つをよく見ると、中心に毛穴があって小さい膿疱になっているところもあります。膿疱の細菌検査で緑膿菌が検出されれば、緑膿菌性毛包炎の診断確定です。誘因となった生活習慣を改め、適切な塗り薬を塗ればすみやかに治っていきます。

毛包炎の原因細菌としては、黄色ブドウ球菌の場合が圧倒的に多いと思われます。それに対して緑膿菌は弱毒菌とみなされていますが、塩素にも負けず、お風呂の温度で増殖しやすく、湿ったところを好むので侮れません。お湯に長く浸かることでふやけた皮膚、開いた毛穴、あるいはアカスリなどによる皮膚表面の荒れは、緑膿菌に増殖場所を提供することになります。

さくらひふ科では、最近3年間に延べ12人の患者さんを緑膿菌性毛包炎と診断して治療しました。そのうち、長湯または半身浴がかかわっていた方は4人、ナイロンタオル(アカスリ)がかかわっていた方は4人いました。

さくらひふ科の患者さんの4分の3は女性ですが、緑膿菌性毛包炎12人中11人が女性でした。20歳代3名、30歳代3名、40歳代3名、50歳代3名と年齢は見事にばらけていました。受診月もばらばらで、夏だから多いというわけではなさそうでした。

緑膿菌性毛包炎は、一見、夏場によくある毛虫皮膚炎や虫刺されのような華々しさですが、当然のことながら、皮膚炎や虫刺されの治療薬(ステロイド外用剤)を使うとかえって増えていきますので、しっかり区別する必要があります。

写真:泡たてネット(これで肌を擦らないでくださいね)

マラセチア毛包炎

夏場は、胸などにニキビのような赤いポツポツがでてきて急速に増えることがあります。皮脂を食べて生きているマラセチアという常在菌(真菌)が毛穴のなかで増えたのかもしれません。

マラセチアはカビ(真菌)ですから、高温多湿な環境で増殖します。また、湿疹・皮膚炎の治療にステロイド外用剤を使ったときに、湿疹が治るのと引き換えにマラセチア毛包炎がでてくる場合があります。

首などにできると一見毛虫皮膚炎のようにも見えることがありますが、毛虫皮膚炎で使うステロイド外用剤でマラセチア毛包炎は増えてしまいますので、区別が必要です。

毛虫皮膚炎

初夏から秋にかけて、毛虫皮膚炎の季節です。赤いボツボツが首や腕などにでて、とても痒い皮膚炎です。

直接肌の上で毛虫が這えばボツボツは密集します。必ずしも毛虫が見当たらなくても、毛虫の大量発生している植物の近くに行くだけでも空中に浮遊している毛虫の毒針毛が肌に触れれば、その部位にボツボツがでてきます。

毛虫の毒針毛中の毒成分に対するアレルギー反応と考えられ、症状のでかたには個人差があるようです。

毛虫皮膚炎の原因はというと、チャ、ツバキ、サザンカなどの葉につくチャドクガの幼虫、サクラ、ウメ、バラ、カキノキなどの葉につくドクガの幼虫などです。ドクガの幼虫はイタドリについていることも多いそうなので、草刈りなどの際にも気をつける必要がありそうです。